税理士事務所の仕事

2022年11月13日税理士

税理士事務所はどういう仕事をしているのか?

税理士事務所のビジネスモデルは顧問契約で安定的な売上を獲得しつつ、スポットの業務で別途報酬を得ていきます。

以前のブログで会計士の方が仕事の幅が広いと書きましたが、税理士事務所の仕事としても以下に記載したように幅広い仕事があります。

ルーティーン業務である法人・個人の税務顧問や、それ以外の業務の内容や報酬相場等について紹介します!

ルーティーン業務

  • 法人税務顧問
  • 個人事業主税務顧問
  • 記帳代行
  • 給与計算
  • 年末調整
  • 各種届出

基本的にどの事務所でもやっているのはこれらの業務でしょう。
相続特化事務所なんかもありますが、多くの税理士法人・税理士事務所は上記の基本業務メインで、後述するスポット業務も織り交ぜてやっています。

法人・個人事業主税務顧問

税理士事務所の最もベーシックかつ重要な売上の要素である税務顧問。
月額3万円、決算料15万円といった内容でクライアントと顧問契約を結びます。
顧問契約をいただくことで、毎月安定した売上を獲得することができます。

毎月や2ヶ月に1回といった定期的なペースでクライアントと面談をし、月次決算の報告や決算の打合せといったことを行います。
その中でクライアントの悩みを聞いて共に解決策を考えたり、クライアントが気付いていない経営課題について提案したりといったこともします。

こうしてクライアントとの信頼関係を築いていく中で、スポット業務も提案できるようになっていきます。

記帳代行・給与計算・年末調整

記帳代行は文字通り記帳を代行します。
通帳や請求書・領収書等を元に、会計ソフトに仕分けを打ち込んで、試算表・決算書を作っていく仕事です。

給与計算は毎月や賞与についての、個人別の支給額等の計算を行います。
設定さえやってしまえば、給与計算ソフトが勝手に計算してくれます。

年末調整は毎年12月頃に会社から書類を渡され、保険料の控除証明書等と一緒に書いて提出するアレです。
1年分の給与等に対する所得税の金額を正確に計算するために行います。
毎月の給与から天引きされている源泉所得税は概算の金額であるため、年末に調整計算を行うわけです。

これらの仕事は経理担当がいない、経理担当の経験が浅いクライアントにおいて、税理士事務所が担当する場合が多いです。
正直どれも誰でもできる仕事であり、記帳代行(経理代行も含む)専門の一般事業会社も存在しているぐらいです。
また、給与計算や年末調整は社労士に任せている会社もあるでしょう。

各種届出

後述するスポット業務とも関連しますが、会社設立や支店等を開設した時の届出、役員に賞与を支給する際の届出、今流行りのインボイス発行事業者になるための届出等、多岐に渡ります。

届出の提出で別途報酬をもらっている事務所もあるようですが、個人的には顧問報酬に含めて考えてよいと思います。

毎月のように届出を提出するといったところはほとんどなく、せいぜい年に1〜2回のところが多くを占めます。
それに、基本的に大して作成の手間がかからない届出ばかりですので、そこで報酬を請求するのは少しおこがましい気がします。

直接お金にはなりませんが、非常に重要な業務の一つです。

スポット業務

ルーティーン業務と異なり、年度によっては検討の必要がない業務、そもそも会計事務所によっては請け負っていないような業務です。

  • 融資相談
  • 消費税の提案
  • 保険の提案
  • 相続対策
  • 財産評価

融資相談

特に創業時に多い融資相談は、クライアントの資金調達ニーズを叶えるべく、金融機関への借入の申込のサポートを行います。
創業される方の中には、設備投資等で融資を希望する方が多く、融資手続きには不安をお持ちで税理士に相談したいという方がいます。
そういった方の融資の申込について、創業計画書等の作成のアドバイスをしたり、金融機関の融資担当者と日程を調整したりといった、サポート業務を行います。

報酬相場としては、手付金0円〜5万円、成功報酬で2%〜4%といったところでしょうか。
ただし、成功報酬については、顧問契約を結ぶ場合は0円といった事務所もあるようです。

融資の報酬については5%を超えると出資法違反になるといったことを耳にしたことがありますので、融資相談を請け負う場合はよく確認して報酬設定した方が良いと思います。

消費税の提案

税理士への損害賠償請求の件数が最も多いのが消費税関係です。

消費税は届出の提出によって、事業者にとって有利な選択を取ることができる制度がいくつかあります。
小規模事業者向けの簡易課税制度や、免税事業者であっても高額な資産を取得する際の消費税課税事業者選択の制度等です。

スポット業務として記載しましたが、これは全ての税理士・税理士事務所職員が都度検討すべき論点であり、ある意味専門家としての腕の見せ所でもあると思います。
クライアントと面談を重ね、将来を予測し、有利な方法について提案を行います。

税務顧問をする上で当然とも言える業務であるため、これで報酬を取ることは適当でないと思います。

これも直接お金にはなりませんが、場合によってはリスクの大きい業務ですので慎重に取り組むべきです。

保険の提案

法人・個人事業主あるいはその従業員に対して保険の提案を行います。
法人経営者等の万が一に備えた保険商品を提案します。

数年前までは節税保険という商品もありましたが、改正により新規で節税保険を売ることはできなくなりました。

保険については代理店登録していないので詳しくはありませんが、契約金額によるようですが、報酬としては数千円〜場合によっては百万円を超える金額をもらえることもあるようです。

保険は代理店登録して自身で提案を行っている税理士も多いですが、個人的には保険営業マンとリレーションを築き、営業マンに任せる方が良いと考えています。

モノを売る、サービスを売る。
そのためにはそのモノやサービスについて熟知していて、これは良いものですよとアピールすることができなければなりません。
税務のプロフェッショナルになるのも大変なのに、保険のプロフェッショナルにもなるとすると、膨大な時間が必要です。
それぐらい保険というものは奥が深いと考えています。

保険は営業マンに任せると、Win-Winのリレーションを築くことができるようになります。
営業マンとしては税理士事務所から顧客を紹介してもらって、契約に至った場合は手数料が入る、税理士事務所としては営業マンからクライアントを紹介してもらって、契約に至った場合は顧問報酬が入る。
片方が依存してしまうケースもなくはないですが、お互い紹介し合える関係を築けると、お互いに営業のルートが増えます。

相続対策

これだけで記事が何本も書けるぐらい広く深い論点です。

具体的には法人オーナー等の相続や事業承継の対策について提案を行っていきます。
少し話を聞いて、じゃあこうしていきましょうといった簡単なものではなく、それなりの時間をとってヒアリングを行い、それから様々な選択肢やその結果等を考えて提案をします。

その提案によって数千万円もの税額を軽減することができる場合もあります。

それゆえリスクが高いところもあり、リスクの高さから相続はやらないという税理士も多く存在します。

しかしながら、個人的にはこの相続対策こそが税理士としての腕が最も問われる業務であると考えます。
相続対策ということで相続税だけを知っていれば良いわけではありません。
相続税・贈与税・法人税・所得税・財産評価といった様々な税目等に絡んでおり、それらを総合的に勘案してベストなソリューションを提供する必要があります。

相続税申告だけであれば誰でもできると思います。
すでに亡くなってしまった場合は、特に対策を講じることができず、淡々と申告書を埋めていくにすぎないためです(もちろんそのために確認したり調査したりする必要もありますが)。

これが相続対策になると途端に難しくなります。
相続税の見込みはいくらなのか、生前贈与するとしても誰にいくら渡すのか、自社の株式は誰が取得するのか、その株価はいくらぐらいでその贈与税はいくらかかるのか、土地の相続税評価額はいくらなのか、どうすれば評価額を落とせるのか等、検討すべきことはいくらでもあります。

ですが、適切な相続対策を講じることができれば、無駄な相続税を支払う必要がなくなり、またその提案による節税額が非常に大きな金額になることもあるため、専門家としてのサービスを提供できたという満足感も、他の業務の何倍も得られるように思います。

リスクも大きいですが、ぜひ相続対策は請け負って、経営者やその家族のサポートをしていただければと思います。

財産評価

これは相続や贈与の際の土地等の不動産の評価や、自社の株価の算定に関する業務です。
相続対策や贈与を多なっていく上で、評価額がわからないとそれに対応する税額も計算できないため、適切なタイミングで評価を行う必要があります。

財産評価についても非常に多くの論点が存在しますが、今は税務ソフト等が充実しており、ソフトに入力していけばそれなりのものは完成するようになっています。

報酬相場としては5万円〜株価評価の場合、対象会社の規模によっては50万円ぐらいになることもあると思います。

これも知らないと評価額が大きく変わるような論点も多々存在するため、それなりにリスクがある業務ですので、やらない(できない)という税理士も多いようです。

個人的には1つのことを検討すれば終わる仕事よりも、複数の課題をクリアして完成させる仕事の方が楽しく取り組めますので、財産評価については積極的に請け負いたい仕事です。

税理士事務所の仕事も非常に多岐に渡りますので、ぜひルーティーン業務だけでなく、スポット業務も積極的に請け負って、クライアントの満足度向上に努めていくと、自身の税理士としてのスキルもアップしてくと思います!