税理士と会計士 どっち?仕事・収入・勉強の実用性

2022年12月17日公認会計士試験

税理士を目指すべきか?会計士を目指すべきか?

仕事の幅が広く、収入も平均的に高く、勉強内容の実用性も高いのは会計士。
さらには会計士登録すれば税理士登録だってできちゃう。

個人的には会計士をオススメします!

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会計士の仕事の幅

会計士は仕事の幅が非常に広いです。

  • 監査法人勤務
  • 組織内会計士として一般事業会社で
  • 税理士登録して税理士として
  • コンサルティング
  • 経営者やCFO
  • 金融機関勤務
  • 金融庁等で公務員として
  • 会計士受験予備校で講師として

監査法人勤務といっても、大手監査法人から少人数の仲間内の監査法人まで規模も様々です。
監査法人でも一般事業会社をメインに担当するのか、金融部に所属して金融機関メインでやるのか、パブリックで自治体等を監査するのか等、監査業務だけでも多岐に渡ります。
また、監査法人ではナレッジ部門や監理部門もありますし、部門によってはデューデリジェンスやIPO等の業務もあります。

一般事業会社もどのような会社に就くか、どのような部門に所属するかで非常に幅が広いです。
経理・財務を担当するといっても、親会社の単体決算チームなのか、グループ会社の連結決算チームなのか、はたまたIFRSチームなのか等、難しい論点についても勉強している会計士であればどんなチームでも対応が可能です。

コンサルティングについてもIPOコンサルやM&Aコンサル、内部統制コンサル等様々なコンサルティング業務を提供することができます。

税理士登録して税理士として活躍している会計士も非常に多いです。
税理士という仕事も様々な税法がありその業務は幅広いですし、知識のレベルとしても高いものを持っていると思うのですが、税理士事務所の業務というのが非常に狭い世界での仕事だからか、税理士として活躍できるフィールドも限定的で、会計士ほどの広さはないという印象です。

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収入

会計士の方が収入面でも優位性があります。

会計士として最もスタンダードな働き方は監査法人に所属することだと思いますが、監査法人勤務であれば公認会計士試験合格後の1年目のスタッフでも500万円程度は稼げます。
東京等の都心部であれば地方よりも手当が多い監査法人もありますので一概には言えませんが、これが修了考査に合格し会計士登録が終わったシニアスタッフ以上になると700万円〜1,000万円程度、マネージャーになると900万円〜、シニアマネージャーになると1,100万円〜と確実に増えていきます。

一般事業会社でも、会計士を求めているぐらいなので上場会社等の規模が大きい会社が多く、その場合は600万円〜といったところです。

税理士の場合は、大手税理士法人の求人でも350万円〜550万円程度と、有資格者であっても監査法人のスタッフよりも稼げないという現実です。
勤続年数を重ねるとそこから増えていく事務所もあると思いますが、ごく一部の限られた人が1,000万円程度稼げるようになるといったところでしょう。

もっとも、会計士であっても税理士であっても、独立してしまえば自分次第というところはありますが、サラリーマンとしてやっていく上では、会計士の方がニーズも多く給与面でも優遇されています。

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勉強内容の実用性

会計士試験で受験する科目の勉強内容は実用性が高いです。
よく試験のためだけの勉強であって、実務や日常生活では活きないと言われることも多いですが、会計士試験については、実際の業務や日々の暮らしの中で役に立つことも多いように思います。

会計士試験の試験科目は以下の通りとなっています。

  • 財務会計論
  • 管理会計論
  • 監査論
  • 企業法
  • 租税法
  • 経営学、経済学、民法、統計学から1科目選択

財務会計論

財務会計論は一般の経理等で要求される商業簿記がメインです。
税理士試験でも簿記論と財務諸表論というのがあるので、この点においてはあまり変わらないかもしれません。

管理会計論

管理会計は対外的な会計である財務会計に対して、経営者等が経営判断に活用する内部的な会計で、管理会計論ではこの管理会計と原価計算が試験内容となっています。
税理士試験では原価計算は出題範囲であるものの頻度は少なく、管理会計については出題範囲外のようです。
税理士としてクライアントの税務顧問をする上では、管理会計や原価計算に関するアドバイスを求められることもあります。
予算管理や原価管理といった管理会計は、製造業等に限らずどの業種でも経営を左右する重要な役割を担っています。

また、管理会計論で学習する財務諸表分析については、税理士としてクライアントの顧問を担当する中でも特に活きています。
クライアントは銀行や第三者からどのように見られているのか?を常に気にしており、自社の決算内容がどのように評価されているかには敏感です。
「自己資本比率が○%なので〜」といった具体的な数値で説明してあげるとクライアントも安心しますし、専門家としてのサービスが提供できている実感も湧きます。

監査論

監査論については、実務ではもちろん、日々の生活にも活きています。

監査論では当たり前の考え方である「リスクアプローチ」。

簡単にいうと、重点的にやる部分と手を抜く部分をメリハリつけてやりましょう、といった考え方です。
監査資源(人や時間)に限りがあるため、全ての項目について全力で取り組んでいたら終わりませんよ、大事なところはしっかりやって、重要性が低いところはさらっとやりましょう、それで全体的として大きな問題がなければOK!という意味です。

どんな仕事をする上でも、日常生活でも、常にこの考え方を持って行動することにより、限られた時間で高い成果を出すことができるようになりました。
それは公認会計士試験を突破する上でも、最もといっても良いほど役に立った考え方だと思います。

企業法

企業法については、主に会社法が試験内容となっています。

監査法人で監査業務に従事していた頃はあまり使う機会がなかったのですが(分配可能額の計算の時ぐらい)、税理士としてクライアントの税務顧問をやる上では意外と触れる機会が多くなりました。
相続対策や事業承継で種類株式を活用したり、会社設立に合同会社(持分会社)を提案したり、減資する際の債権者保護手続きを確認したりと、色々と試験勉強で学んだことが実務でも活きています。

実際の実務では必ず条文を読んだり調べたりするのですが、一度触れたことがあるということで、すぐに論点や確認すべきポイントが浮かびます。
会社法については税理士試験では試験範囲外のようですので、この点においての会計士試験の内容がより実用的であるといえます。

租税法

租税法については、税理士試験でも所得税 or 法人税とその他税法2科目を受験することになりますが、会計士試験においては所得税 and 法人税 and 消費税となっているため、税理士として実務をしていく上で必要な基本的な税目はすべてカバーしていることになります。

税理士で法人税・所得税・消費税の3科目を取得している人はほとんどいないと思います。
受験戦略上、法人税と所得税の2科目の取得を目指すというのが非効率だからなのかもしれませんが。

さらに会計士試験においては、論文式試験に合格し、実務経験を積んだ後に受験する修了考査では、相続税や土地等の財産評価について、国際課税や連結納税についても試験範囲となっています(実際に試験に出ることは少ないので、あまりガッツリは勉強しませんが…)。

実際に税理士法人で税務実務を経験し、何人もの税理士の仕事を見ましたが、特定の税目については強くても、自身が試験で選択していない税目については論点を把握できていないという税理士が多かったです(もちろん、しっかり勉強し続けている税理士であれば、自身の選択科目でなくとも適切に対応することができていました)。

この点会計士であれば、ほとんどの税目について幅広く学習しているため、税目による不得手というのがなく、クライアントからの相談に対しても論点を掴むことができ、リスクや解決策をすぐに提案することができるのです。

選択科目については私自身は経営学を選択しましたが、財務諸表分析等の管理会計論と同様の論点も多々あり、こちらは特にコンサル等の実務で活きる内容が多かったです。

会計士の方がおトク!

2〜3年で税理士になりたいんだ!という人でなければ、個人的には会計士を目指した方が良いと考えます。
会計士登録すれば、税理士登録も可能になります。

ただ、会計士登録までには、会計士試験合格→実務補習→修了考査合格という長い道のりがあり、最短でも4〜5年はかかると思います。
働いて実務経験を積みながら税理士試験5科目合格をわずか2年で達成する猛者もいないことはないと思いますが、あまり現実的ではないでしょう。
税理士であれば科目合格が永久であるため、働きながらでも1年に1科目ずつ合格を目指すということもできますが、会計士試験における科目合格は時限的のため短期間で論文式試験を突破する必要があります。
この点が社会人受験生にとっては難しいところかもしれません。

しかしながら、仮に試験合格を諦めたとしても、今後の仕事や人生において実用性が高いのは会計士試験の内容だと思います。

税理士であっても会計士であっても、合格を目指して頑張っている全ての受験生に、いつか同じ会計人として同じ業界で働けるようにエールを送りたいです。

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